半導体後工程受託製造(OSAT: Outsourced Semiconductor Assembly and Test)世界最大手ASE(TWSE: 3711、NYSE: ASX)の2021年第4四半期決算をまとめました。
この記事を読むと
- Q4業績振り返り
- 来期2022Q1業績見通し
- 中・長期的ビジネス展望
について知ることができます。
ポイントは
- 中国市場での顧客基盤拡大戦略におけるリソース再編成
- 先端パッケージングの売上が大幅増加
- 高まるテスト及び先端パッケージング需要
- 加速するIDMのアウトソーシング比率
となっております。
更新履歴
- 2022年4月23日:サムネイル更新
決算資料(参照資料)
以下、決算資料のダウンロード先です。
2021年第4四半期業績
2021Q4 | QoQ | YoY | |
---|---|---|---|
売上高 | 1,729 (約7,400億円) |
+14.8% | +16.2% |
粗利益 | 329 (約1,400億円) |
+6.9% | +41.2% |
粗利益率 | 19.0% | -1.4 ppt | +3.3 ppt |
営業利益 | 196 (約800億円) |
+6.5% | +74.4% |
営業利益率 | 11.3% | -0.9 ppt | +3.7 ppt |
EBITDA | 519 (約2,200億円) |
+59.0% | +98.9% |
EBITDA マージン |
30.0% | +8.4 ppt | +12.5 ppt |
EPS | 7.2 | +118.8% | +206.4% |
収益の単位:億TWD
EPS (Basic EPS)の単位:TWD
収益の括弧内は日本円換算
括弧内に日本円換算値を記載しました。1TWD=4.293JPYで計算しています。以降、全てこのレートに従います。
- 前期比での粗利益率及び営業利益率低下要因:EMSのビジネスミックス悪化
- 前年同期比での粗利益率及び営業利益率改善要因:ATM事業の収益性向上
- EPSは外部要因「第4四半期にて子会社の中国主要拠点売却」を含む
- 中国事業譲渡益の計上がない場合のEPS:Diluted EPS: 3.45、Basic EPS: 3.66
ASEは2021年12月に中国の主要拠点を売却しました。
複数ある中国拠点のリソースを再編成し、ASEの子会社SPILの中国拠点(蘇州市)に集中投資することが目的になります。
蘇州市のSPILは中国市場の顧客基盤拡大による高い収益性を期待されているようです。
業績推移(四半期別)
以下、2019年第1四半期 ~ 2021年第4四半期の間の四半期業績推移になります。
売上高・粗利益・営業利益
売上高・EBITDA・営業利益
粗利益率・営業利益率
EBITDAマージン・営業利益率
EPS
上記グラフの2021Q4 EPSは中国事業譲渡益を含んだ数値になります。
譲渡益の計上がない場合のEPSは、前述の通りDiluted EPS: 3.45、Basic EPS: 3.66です。
2021年第4四半期業績(ATM・EMS事業)
次にASEの主要事業
- 半導体IC組立・テスト(ATM: IC Assembly, Testing and Material)
- 電子機器受託生産(EMS: Electronics Manufacturing Services)
の業績振り返りを行なっていきます。
2021Q4 | QoQ | YoY | ||
---|---|---|---|---|
A T M 事 業 |
売上高 | 920 (約4,000億円) |
+2% | +26% |
粗利益 | 257 (約1,100億円) |
+4% | +56% | |
粗利益率 | 28.0% | - | - | |
営業利益 | 161 (約700億円) |
+3% | +101% | |
営業利益率 | 17.5% | - | - | |
E M S 事 業 |
売上高 | 815 (約3,500円) |
+33% | +3% |
粗利益 | 71 (約300億円) |
+21% | +2% | |
粗利益率 | 8.7% | - | - | |
営業利益 | 36 (約150億円) |
+25% | +4% | |
営業利益率 | 4.4% | - | - |
収益の単位:億TWD
収益の括弧内は日本円換算
事業別売上高推移
その他("Others")は売上全体の1%前後となっているため数値記載を割愛しております。
事業別売上高占有率推移
以下、ATM・EMS事業のビジネスハイライトになります。
ATM事業
第4四半期ハイライト
売上高 QoQ +2% / YoY +26%
顧客負荷が予想を上回ったことで、当初会社が公表した業績予想を若干上回りました。
粗利益率 QoQ +0.6ppt / YoY +5.4ppt
粗利益率は前年同期比で大きく改善しました。
- 積載量の増加
- 効率性の向上
- ASP(平均販売価格)
をグロスマージンの前年同期比大幅改善要因に挙げていました。
サービス別売上高推移グラフ(下記参照)と合わせて読んで頂きたいビジネスハイライトになります。
- 先端パッケージングの売上が大幅増加
- 先端パッケージングは2022年まで好調が続く見込み
- テスト収入は、EAR関連の事業調整の影響を受けた2021年は低調でしたが、2022年にはアウトパフォームする見込み
- ワイヤーボンディングの売上比率は低下したが米ドルベースでは横ばい
サービス分野別売上高推移
サービス分野別売上高占有率推移
2021年通年ハイライト
ATM事業全体
- 売上高成長率前年比+26%
- EARの影響を受けたビジネスを除くと前年比+45%増
- 全てのサービスで幅広く成長達成
- この勢いは少なくとも2022年まで続く
- 粗利益率26.5%
ワイヤーボンディング
- 売上高成長率前年比+36%
- 2022年も二桁成長を達成する見込み
テスト
- 売上高成長率前年比+12%
- EARの影響がなければ、2022年の成長率は2021年より倍増する見込み
先端パッケージング
- 売上高成長率前年比+23%
- 2022年の成長率はこの数字を上回る予想
- 先端パッケージングはより複雑化しており、そしてより多くの需要がある
- 自動車向け売上は前年比+60%以上
- 2022年に自動車向け売上が100億に達する見込み
EMS事業
第4四半期ハイライト
売上高 QoQ +33% / YoY +3%
SiP(System in Package)サービスに対する需要が想定を上回ったことにより、需要が好調に推移しました。
QoQ大幅・YoY小幅増加の要因として以下を挙げていました。
- 第3四半期に部品やチップの不足による生産が遅れ、一部のSiP製品の生産サイクルが第3四半期と第4四半期に分散された
- 一部の生産は2022年第1四半期にずれ込む予定
- 2020年のコンシューマ向けSiP事業は当年度の2021年に比べて開始時期が大幅に遅延
粗利益率の低下要因については、プロダクトミックスが高材料通過型製品にシフトしたことを指摘していました。
設備投資
第4四半期の設備投資額はUS$4.7億でした。
内訳は
- パッケージング事業:US$2.3億
(フリップチップ 54台/バンピング 19台/WLP&SiP&WB 158台) - テスト事業:US$1.6億
- EMS:US$0.7億
- 配線材料事業とその他:US$1.3億
となっています。
その他は、建屋、スマートファクトリー、インフラ等への投資を示します。
2022年業績見通し
2022年第1四半期
- 1 ~ 3月期は旧正月により稼働日数が少ないが、非常に好調な業績を見込む
- 季節性の影響があるSiPビジネスを除いて、ATM事業はフル稼働を続ける
- ATM事業の粗利益率は若干高くなる
- EMS事業は季節性パターンに従い、2021年通年の平均と同程度
- 営業利益率も同様
2022年通年
- 売上高、収益率共に2021年に続いて改善
- ロジック半導体市場の2022年成長率5 ~ 10%に対して、ATM事業は2倍の成長率を見込む
ATM事業に高い成長が見込まれる要因は以下2点
- 市場の需要が非常に強い
- IDMによるアウトソーシング加速の兆し
さらに
- 価格環境は友好的かつ安定的
- テストや先端パッケージングサービスの比率が高まっている
- SiPの顧客ポートフォリオを拡大中
- 2022年にはあらゆる分野から多様な背景を持つ新しいSiPの顧客が誕生することを見込む
背景もあって、2022年に初めて新規SiP顧客の売上が5億の大台に乗るようです。
中・長期的展望
業績について
- 2022年のATM事業の売上高成長率と営業利益率は2014年に設定した歴史的なピークレベルを超える
- 連結営業利益率は2021年比でさらに改善を見込む
市場需給について
- 2021年第1四半期決算にて2023年には需要と供給の全体的なバランスが見えてくるとコメントしたが、現在のところ、生産能力と供給の制約は2023年以降も続くと見ている
- 特にこの2年間は、長期サービス契約やソケットのデザインなど、お客様からの信頼を得ている
- お客様の長期サービス契約は2023年までとなっており、今後、お客様との協業を進め、お客様のために生産能力を増強していく予定
- IDMのアウトソーシング比率は加速
- HPC、自動車、5Gへの移行、IoT等のメガトレンドの存在と、シリコンコンテンツの拡大が、非常に強固な市場環境をもたらしている
上記より、長期的な見通しについては楽観視しているようです。
まとめ
- EMSのビジネスミックス悪化により粗利益・営業利益率QoQマイナス成長
- ATM事業の収益性向上により粗利益・営業利益率YoYプラス成長
- 先端パッケージングの売上が大幅増加
- 子会社の中国主要拠点を売却し、中国向けビジネスのリソース再編成
- 価格環境は友好的かつ安定的
- SiPの顧客ポートフォリオを拡大中
- 加速するIDMのアウトソーシング比率
では、この辺で。
拜拜~