今回はNANDフラッシュメモリのコントローラIC設計大手、Phison Electronics(TPEX: 8299)について紹介します。
- NANDフラッシュメモリ向けコントローラに特化したファブレスIC設計企業
- コントローラIC単体での売上は20%程度で、利益マージンの大きいモジュール販売が大半を占める
- 業界最先端の176層3D NANDフラッシュメモリ対応コントローラを発表
- 2022年にPCIe 5.0 SSDの登場を控える
更新履歴
- 2022年4月23日:サムネイル更新
- 基本データ
- マイルストーン①:2019年に世界初のPCIe 4.0対応SSDコントローラをリリース
- マイルストーン②:2022年にPCIe 5.0対応SSDの登場を控える
- コーヒーブレイク:2021年ベストストレージ製品受賞
- ストレージ市況:SSDコントローラ市場は今後CAGR +14%で拡大
- コーヒーブレイク:MSCI Global Standard Indexに採用
- 株価推移
- 業績(四半期)
- 業績(通年)
- 収益性(通年)
- 株主還元(通年)
- まとめ
基本データ
基本情報
銘柄コード | 8299 |
---|---|
市場 | 台北証券取引所(TPEX) |
会社名 | Phison Electronics Corp. 群聯電子股份有限公司 |
本社 | 台湾 苗栗市 |
設立年 | 2000年 |
時価総額 | 760億TWD (約3,000億円) |
― CES 2021 - Event Press Kits より
2000年11月にストレージ製品のコントローラを開発する会社として操業を開始しました。
最初の製品は、世界初となるシングルチップのUSBフラッシュドライブIC(USBメモリ用コントローラIC)でした。
2004年に台北証券取引所にIPO上場し、その後も世界をリードするストレージ製品のコントローラをリリースしています。
― CES 2021 - Event Press Kits より
コントローラICベース換算の販売数は年間6億ユニットを上回っており、システム製品を含めて年間売上US$16.4億以上を達成しています。
事業内容
フラッシュメモリ向けコントローラの研究開発・設計と販売のみを行うファブレス半導体企業になります。
USBフラッシュドライブ向けのみならず、現在ではSDやmicroSD等の各種メモリカードの他、eMMC、UFS、そしてPATA/SATA/PCIe SSD向けのストレージ製品向けコントローラの開発・設計と販売を行っていて、ODM、OEMサービスも提供しています。
フラッシュメモリコントローラは以下のようなストレージ製品に搭載されています。
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PCIe SSD | SATA SSD | USB External SSD |
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eUFS | eMMC | USB Flash Drive |
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UFS Card | microSD Card | SD Card |
ストレージ製品は基本的にフラッシュメモリとコントローラICがセットになっており、Phisonは
- コントローラICの単体販売
- フラッシュメモリとコントローラICを組み込んだ完成品(及びモジュール)販売
を主としています。
さらにモジュール販売はOEM/ODM形態となっています。
ビジネス別売上高割合
売上内訳は以下のようになっていて
- モジュール販売が大半
- コントローラIC単体での売上は20%程度
- 主なアプリケーション先:コンシューマ、ゲーミング、組み込みODM、産業向け
- その他はIP販売等
各々の比率バランスが良いと感じます。
ビジネス別売上高成長推移
各ビジネスの売上高成長推移(直近1年間)は以下のようになっています。
会社全体としての成長も素晴らしいですが、各ビジネスがしっかり成長していて基盤が強いなと感じます。
特に、組み込みODMと産業向けの成長が著しいです。
マイルストーン①:2019年に世界初のPCIe 4.0対応SSDコントローラをリリース
2019年のCOMPUTEX TAIPEI(コンピュータ関連の見本市)にて、同社から世界初のPCIe 4.0対応SSDコントローラ「E16」が発表されました。
同イベントでAMD(NASDAQ: AMD)から第3世代Ryzenプロセッサが発表されたのですが、CPUと同時リリースできるようにAMDから懇願され、開発に踏み出したようです。
今年5月には、E16の後継にあたる「E18」がリリースされています。
E16と比較して約1.5倍、PCIe 3.0 4 Laneと比較して約2.1倍読み出し・書き込み速度が速いです。
また、176層3D NANDは現在量産されているNANDで最先端のもので、Micron(NASDAQ: MU)が量産化に成功しています。
マイルストーン②:2022年にPCIe 5.0対応SSDの登場を控える
今年9月28日に、PCIe 5.0接続SSD向けのコントローラ「E26」が発表されました。
- 12nmプロセスで製造
- M.2、U.3、E1.S、E3.Sといった各種フォームファクタに対応
- テストチップは既にテープアウト済み
- E26搭載SSD製品の登場は2022年後半の見込み
PCIe 5.0は1レーンあたりの物理帯域が32GT/sとなっていて、前世代(PCIe 4.0)の16GT/sに対して2倍の転送速度を実現する次世代インタフェース規格です。
コーヒーブレイク:2021年ベストストレージ製品受賞
そんなストレージ製品向けコントローラのリーディングカンパニーであるPhisonですが、StorageNewsLetter.com主催の2021年ベストストレージ製品アワードのSSDコントローラ部門にノミネートされています。
〔中略〕
HDDs
Best in HDDs: Toshiba
Best in HDD controllers: Marvell
SSDs
Best in SSDs: Samsung
Best in SSD controllers: Phison
ストレージ市況:SSDコントローラ市場は今後CAGR +14%で拡大
Market Research Futureの調査によると、SSD向けコントローラ市場は今後CAGR +14%で成長し、2025年にUS$190億の市場規模に拡大するようです。
使用データ量が加速度的に増加している世の中ですのでフラッシュメモリコントローラ市場のみならずストレージ市場全体においても明るい成長が期待できると思います。
最近ではFacebookが社名変更して、VR/ARに力を入れていくなんて話があるわけで
仮想空間を作ろうならば莫大なデータ量を保存するためのストレージ、そして圧倒的なデータ書き込み・読み出し速度が求められてきます。
SSDをはじめとする近年のNANDフラッシュメモリ搭載ストレージ製品はコントローラの性能がシステム全体の性能を決定すると言っても過言ではなく、フラッシュメモリのコントローラIC需要は今後も強い状況が予測されます。
半導体不足の観点から見てもコントローラIC製造に使用するプロセスメインストリームは1Xnm ~ 4Xnmと言われており、半導体不足の特に深刻なプロセスノード帯と被ってくるわけです。
さらにハイエンドのコントローラICはCPUを3つ内蔵し毎秒7GB近いデータを処理しなければならなく、今後PCIe 5.0、6.0と世代が進むにしたがって、さらなる(1)処理能力の向上、(2)低消費電力化、の要求により適用プロセスの一桁nm入りは確実視されています。
コーヒーブレイク:MSCI Global Standard Indexに採用
PhisonはMSCI社のGlobal Standard Indexに採用されています。
TPEX上場企業約800社の内、以下の5社が本指数に採用されています(2020年12月末時点)。
銘柄コード | 企業名 | セクター |
---|---|---|
3105 | WIN Semiconductors 穩懋半導體 |
半導体 |
4743 | Oneness Biotech 合一生技 |
バイオテクノロジー医療 |
5347 | Vanguard International Semiconductor 世界先進積體電路 |
半導体 |
6488 | GlobalWafers 環球晶圓 |
半導体 |
8299 | Phison Electronics 群聯電子 |
半導体 |
― TPEX市場の概要 より
WIN SemiとGlobalWafersについては過去記事で紹介していますので、興味あれば読んでみて下さい。
株価推移
年初来チャート
- 株価:377.5TWD
- 年初来リターン:+13.53%
(2021年11月5日時点)
春先にかけて株価が大きく上昇し、その後はジリ貧ですね……
モジュール販売が売上の70%以上を占めているとは言え、やはり半導体メモリの短期的な価格・受給の影響を受けます。
半導体メモリ銘柄は外から見ているぐらいが丁度いいで
ではなぜ銘柄紹介するんですかw
15年チャート
メモリはコモディティなので短期的な株価推移はどうしてもサイクル調になってしまいますが、長期で見るとこの会社の株価は右肩上がりなのです。
ズンズンズンズンズンズン
5G、ビッグデータ、メタバースによるストレージ市場のさらなる成長は期待できるので良いかもです。
業績(四半期)
売上高・粗利益・営業利益
粗利益率・営業利益率
EPS
- 2020Q3、2020Q4は子会社株売却による特別利益をそれぞれ、4.02TWD、12.26TWDを含む
業績(通年)
売上高・粗利益・営業利益
粗利益率・営業利益率
EPS
- 前述の通り、2020年通年EPSは子会社株売却による特別利益を含んだ数値
収益性(通年)
ROE・ROA
株主還元(通年)
EPS・配当金・配当性向
配当金・配当利回り
- 10年間で3.2% → 4.6%と徐々に配当利回りを上げながらも配当性向は50%前後をキープ
まとめ
- NANDフラッシュメモリ向けコントローラに特化したファブレスIC設計企業
- コントローラIC単体での売上は20%程度で、利益マージンの大きいモジュール販売が大半を占める
- 業界最先端の176層3D NANDフラッシュメモリ対応コントローラを発表
- 2022年にPCIe 5.0 SSDの登場を控える
- ストレージ業界の拡大と共に成長するグロース銘柄でありながら配当利回りは4%前後の高配当株でもある
では、この辺で。
拜拜~