シリコンウエハ業界大手3社(信越化学、SUMCO、GlobalWafers)の2021年第2暦四半期決算をまとめました。
この記事を読むと
- 各社の2021CQ2業績
- 今後のウエハ受給/価格
- 今後の各社の設備投資
について知ることができます。
特に、設備投資への動向については半導体不足と言われている状況下で投資家が頭に入れておく情報であると思います。
更新履歴
- 2022年4月23日:サムネイル更新
決算資料(参照資料)
以下、決算資料のダウンロード先です。
また本記事を読むにあたっての注意点として以下2点を挙げさせていただきます。
- 信越化学 = 電子材料事業の業績
- 会計期間の違い(信越化学は3月期決算、SUMCOとGlobalWafersは12月期決算)
2点目に関しては、信越化学の「2021CQ2 = 2021年度第1四半期」を意味します。
1点目についてですが、当四半期より報告セグメントが変更されました。
半導体シリコンビジネスは電子材料事業に組み込まれ、他に
- 半導体用封止材
- LED用パッケージ材料
- フォトレジスト
等のビジネスが本セグメントに含まれています。
2021年第2暦四半期業績
信越化学
2021CQ2 | QoQ | YoY | |
---|---|---|---|
売上高 | 1,611億円 | +4.5% | +11.5% |
営業利益 | 567億円 | +19.4% | +9.4% |
SUMCO
2021CQ2 | QoQ | YoY | |
---|---|---|---|
売上高 | 818億円 | +7.7% | +9.2% |
EBITDA | 247億円 | +18.8% | +8.3% |
EBITDAマージン | 30.3% | +2.9ppt | -0.2ppt |
営業利益 | 124億円 | +32.3% | +7.6% |
営業利益率 | 15.1% | +2.8ppt | -0.3ppt |
純利益 | 90億円 | +22.0% | +8.0% |
純利益率 | 11.0% | +1.3ppt | -0.1ppt |
EPS | 31.01円 | +22.3% | +8.4% |
SUMCOのQ2決算の詳細な内容についてはこちらをどうぞ
GlobalWafers
2021Q2 | QoQ | YoY | |
---|---|---|---|
売上高 | 152億TWD (約597億円) |
+2.7% | +11.0% |
EBITDA | 69億TWD (約271億円) |
+37.0% | +23.4% |
EBITDAマージン | 45.5% | +11.4ppt | +4.6ppt |
営業利益 | 43億TWD (約169億円) |
+7.8% | +0.7% |
営業利益率 | 28.0% | +1.3ppt | -2.9ppt |
純利益 | 39億TWD (約153億円) |
+47.3% | +16.4% |
純利益率 | 26.0% | +7.8ppt | +1.2ppt |
EPS | 9.09TWD | +47.1% | +16.4% |
括弧内に日本円換算値を記載しました。1TWD=3.925JPYで計算しています。
GlobalWafersのQ2決算の詳細な内容についてはこちらをどうぞ
2021年第2暦四半期のシリコンウエハ市場振り返り
以下、各社のカンファレンスコールでのCEOコメント及び質疑応答の中で2021年4 ~ 6月期のシリコンウエハ市場に関する内容をまとめたものになります。
また、以降の各センテンスの先頭における四角マークは
- ■:信越化学
- ■:信越化学
- ■:GlobalWafers
の各々のカンファレンスコールをソースとしていることを意味します。
300mmウエハ
- ■ほとんどのウエハメーカーはフル稼働状態
- ■全分野において半導体デバイス好調
- ■半導体不足に起因するサプライチェーンでの在庫積み上げも含まれている可能性あり
- ■ロジック向け:更に需要が増大し、タイト感増幅
- ■メモリ向け:DRAMに続き、NANDも回復
200mmウエハ
- ■自動車を始めとして需要の強い状況が続いている
- ■2022年に向けての引き合いが強いが、再投資が可能な価格水準ではない
- ■車載・民生・産業向け好調
- ■人員増強による増産対応実施も供給が需要に追い付かない
今後の受給
以下、各社のカンファレンスコールでのCEOコメント及び質疑応答の中で今後のシリコンウエハ受給に関する内容をまとめたものになります。
マーケット全体
- ■2022年通年の見込みウエハ供給は依然として非常にタイト
- ■2021年下半期だけでなく2022、2023年通してタイトであると見込む
- ■需要の強さ:300mm = 200mm > 150mm
300mmウエハ
- ■ロジック向け:需要増加により需給は更に逼迫
- ■メモリー向け:同上
- ■グリーンフィールドの立ち上げにより新たな生産能力が追加されるまでは需給はますます逼迫する見込み
- ■2021年同様に出荷数プラス成長継続
- ■EWとPWの需要が特に強い
EW(Epitaxial Wafer、エピタキシャル・ウエハ)
PW(Polished Wafer、ポリッシュト・ウエハ)
です。
200mmウエハ
- ■好調継続
- ■引き続き人員増強による増産対応を実施するも需要には追い付いていない
- ■タイト感が凄まじい
- ■SOIの需要が特に強い
SOI(Silicon-On-Insulator Wafer、SOIウエハ)
です。
150mmウエハ
- ■他の口径同様、安定した強い需要
今後の見通し:ウエハ価格
300mmウエハ
- ■スポット価格:値上げで決着しつつある
200mmウエハ
- ■スポット価格:300mm同様に値上げで決着しつつある
今後の設備投資
今後の設備投資については会社ごとにまとめました。
信越化学
全体
- ■キャパ増強におけるポリシー:期待先行ではなく、契約に基づく逐次増設
- ■製造装置の納期が延びていることもあり、新規設備投資にはある程度の時間を要する
- ■2022年、2023年に増量して欲しいという要望の全てには応えられない状況
- ■これまでの逐次増産(ブラウンフィールド)とは異なり、建屋からの投資(グリーンフィールド)が必要になると、投資額は大きくなる
- ■顧客一社一社と丁寧に話し合いと進めており、そのコストについて十分に理解をいただいている
SUMCO
300mmウエハ
- ■グリーンフィールド投資による増量は、価格と期間のコミットメントが必要で、顧客にはご理解いただいている
- ■稼働時期は、2024年初頭から段階的に逐次増産を継続する
- ■投資資金については、自己資金、銀行借り入れ、社債、公募増資等いろいろな選択肢があるので、これから検討していくことになる
GlobalWafers
全体
- ■グリーンフィールド:将来的に計画するが今はその時期ではない
- ■ブラウンフィールド:300mmウエハ拡張が向こう18 ~ 20ヶ月における最優先の設備投資プロジェクト
300mmウエハ
- ■拡張対象ファブ:日本、SOI@アメリカ、EW@台湾・韓国以外
- ■2023年からこれらブラウンフィールド投資による恩恵を受ける
まとめ
- 300mmウエハ:①ほとんどのウエハメーカーはフル稼働状態、②半導体不足に起因するサプライチェーンでの在庫積み上げも含まれている可能性あり
- 200mmウエハ:人員増強による増産対応実施も供給が需要に追い付かない
- 今後の受給:①2022年通年の見込みウエハ供給は依然として非常にタイト、②2021年下半期だけでなく2022、2023年通してタイトであると見込む
- 設備投資:GlobalWafersが300mmウエハファブへのブラウンフィールド投資を行う
では、この辺で。
拜拜~