シリコンウエハ業界大手3社(信越化学、SUMCO、GlobalWafers)の2021年第1暦四半期決算をまとめました。
この記事を読むと
- 各社の2021CQ1業績
- 今後のウエハ受給/価格
- 今後の各社の設備投資
について知ることができます。
特に、設備投資への動向については半導体不足と言われている状況下で投資家が頭に入れておく情報であると思います。
更新履歴
- 2022年4月23日:サムネイル更新
- 2021年7月24日:タグ更新
- 2021年6月15日:四半期表記をCQ(Calendar Quarterly:暦四半期)に統一
- 決算資料(参照資料)
- 2021年第1暦四半期業績
- 2021年第1暦四半期のシリコンウエハ市場振り返り
- 今後の受給
- 今後の見通し:ウエハ価格
- 今後の設備投資
- 顧客の在庫に対する考え方について(信越化学の質疑応答より)
- まとめ
決算資料(参照資料)
以下、決算資料のダウンロード先です。
また本記事を読むにあたっての注意点として以下2点を挙げさせていただきます。
- 信越化学 = 半導体シリコン事業の業績
- 会計期間の違い(信越化学は3月期決算、SUMCOとGlobalWafersは12月期決算)
2点目に関しては、信越化学の「2021CQ1 = 2020年度第4四半期」を意味します。
2021年第1暦四半期業績
信越化学
SUMCO
GlobalWafers(環球晶圓)
2021年第1暦四半期のシリコンウエハ市場振り返り
以下、各社のカンファレンスコールでのCEOコメント及び質疑応答の中で2021年1 ~ 3月期のシリコンウエハ市場に関する内容をまとめたものになります。
また、以降の各センテンスの先頭における四角マークは
- ■:信越化学
- ■:信越化学
- ■:GlobalWafers
の各々のカンファレンスコールをソースとしてことを意味します。
マーケット全体
- ■2021年第1四半期のウエハ世界出荷数は過去最多を記録
- ■例年は停滞する時期であるが、今年は堅調
- ■特に、5Gとオートモーティブ(特に自動運転とEV分野)が牽引
300mmウエハ
- ■昨年4月より回復しており、全ウエハメーカーともフル稼働状態
- ■ロジック向け:好調で供給が追いついていない
- ■メモリ向け:DRAMが回復基調
200mmウエハ
- ■昨年12月より急回復
- ■自動車、産業、民生、通信、ゲーム等、全ての分野で回復
- ■一部で在庫積み増しが続く
- ■車載・民生向けを中心に需給がタイト
150mm以下のウエハ
- ■2018年以降落ち込んでいたが、昨年11月より回復
- ■全ウエハメーカーとも人的能力においてフル稼働が続いていると見ている
CMOSとディスクリート半導体向けウエハ
- ■顧客の製造ラインは既にフル稼動状態
- ■パワー半導体へフォーカスしてウエハ生産
- ■(実際の所、GlobalWafersへの売上高寄与が大きいのはパワー半導体である)
今後の受給
以下、各社のカンファレンスコールでのCEOコメント及び質疑応答の中で今後のシリコンウエハ受給に関する内容をまとめたものになります。
マーケット全体
- ■4 ~ 6月期は全口径において需要が1 ~ 3月期より増えていくと予想
- ■ただし、能力律速により出荷数は微増と見ている
- ■このまま強い需要が続くと、2022年後半 ~ 2023年の間に単結晶、ポリッシュ加工、エピタキシャル等全工程で能力不足の可能性
- ■現在の生産量のままいくと2022年に最大級の不足状況に陥る
- ■その後急激に回復するのではなく、2023 ~ 2024年にかけて徐々に落ち着いてくる状態を想定
300mmウエハ
- ■ロジック向け:需要は引き続き拡大し、更に逼迫
- ■メモリ向け:DRAMに続き、NANDも回復の動き
200mmウエハ
- ■車載・民生向けに加えて、産業向けも需要回復
- ■需要に供給が追いついていない
メモリ向けウエハ
- ■下期に増量の話が出てきている
今後の見通し:ウエハ価格
全体
- ■スポット価格が今年後半から急上昇すると予想
- ■長期契約外ユーザーによるウエハの取り合いが発生しているため
300mmウエハ
- ■2021CQ2長期契約価格:堅持
- ■2021CQ2スポット価格:300mmロジック向けウエハの値上げ要請が通りつつある
200mmウエハ
- ■2022年価格:夏頃から始める
- ■2021CQ2長期契約価格:堅持
- ■2021下期価格:価格改善に向けて交渉中
今後の設備投資
今後の設備投資については会社ごとにまとめました。
信越化学
全体
- ■市場からの要求が強いのは300mmのエピウエハ(EPW)と200mm全般
- ■増強については顧客と丁寧に話を進めている
- ■新規設備投資のための大幅な値上げについては一部容認され始めている
- ■2020年 → 高品質化対応の投資がメイン
- ■2021年 → 同様の流れ
- ■2022年 → 2023年に必要な規模能力を見て投資金額が変わる
- ■2023年以降 → 全工程で増強が必要であり、大幅な設備投資が見込まれる
- ■只、増強幅や先端品向け比率等により投資額が異なるので、どのくらいの値上げ幅が必要か具体的なことは申し上げられない
300mmウエハ
- ■全ユーザーから2022 ~ 2023年にかけての増量要請が相次ぐ
- ■2021 ~ 2022年は増量の余地なし
- ■2023年以降の話し合いとなる
200mmウエハ
- ■新たな設備投資予定はなく、現状のキャパで対応
SUMCO
300mmウエハ
- ■戦略顧客からの強い要請を受け、グリーンフィールド投資の検討開始
- ■候補地として日本及び台湾を検討
- ■契約条件は、価格の改善を含め経済合理性が必須。具体的数字のみではなく、複合的・総合的観点から判断必要
- ■価格の改善としては現在のスポット価格から50%アップを希望
- ■将来の最先端仕様に見合う建屋及び設備の投資が必要
- ■以前、ウエハメーカー全体が各々2倍のキャパ拡大をしていまい、その後ずっとウエハ価格が買い叩かれたことを非常に懸念
- ■一度にドカっとキャパを増やすのでなく、段階を追って拡大する計画
- ■以前の業界全体での失敗を踏まえて他のウエハメーカーも同じ認識であると思っている
- ■仮に現時点で判断しても稼働時期は2024年頃
200mmウエハ
- ■新規生産能力の増強投資は行わないが、生産性の改善は行う
GlobalWafers
- ■戦略顧客からグリーンフィールド投資の拡張要求を受けており、現在議論中
- ■(GlobalWafersとしては)以下の3条件が必須と考えている
- ■(1)長期契約
- ■1 ~ 2年の長期契約ではなく、それ以上の長期期間に渡ってGlobalWafersにコミットメントしてくれることを条件に顧客との話し合いを開始
- ■(2)グリーンフィールドでの生産におけるウエハ価格
- ■(3)プリペイメント
顧客の在庫に対する考え方について(信越化学の質疑応答より)
- コロナ渦における経済活動の再開や米中摩擦等によりモノ不足が表面化
- これにより、各サプライチェーンで在庫水準を上げる動きが活発化
- 仮に半年後に需要が落ち着いたとしても、在庫水準は上がったままと見ている
まとめ
- 2021年第1暦四半期のウエハ世界出荷数は過去最多を記録
- 全口径において受給がタイト
- このままいくと2022年に最大の不足状況に陥る
- 設備投資に関しては各社かなり慎重である
では、この辺で。
拜拜~