Bloombergから3月30日付で「Taiwanese Battery Maker ProLogium Is Said to Weigh SPAC Deal」との記事のニュースを見つけました(ソースは後述)。
台湾の固体電池ベンチャー(メディアによっては全固体電池ベンチャーとも紹介されている)、ProLogium Technology(輝能科技)が2021年後半にアメリカの証券取引所にSPAC上場するかもしれないとのことです。
話題性と即効性がありそうので、引用ニュース、ネットの情報とたいかぶの過去ツイートを織り交ぜながら手短にまとめたいと思います。
更新履歴
- 2022年4月23日:サムネイル更新
- 2021年7月24日:タグ更新
- 2021年後半、米国証券取引所へSPAC上場!?
- 読み進める前に
- ProLogium Technology(輝能科技)について
- グローバルSSBのマイルストーン
- 2019年8月:中国EVメーカーNIO(蔚来汽車)と戦略提携締結
- 2020年5月:Series Dにて$100M調達
- 2021年2月:ベトナムの合弁会社でSSB生産発表
- 技術的な難しさを指摘する声
- まとめ
2021年後半、米国証券取引所へSPAC上場!?
以下、引用元のBloomberg記事です。
(リンク先はYahoo Financeです。BloombergのURLを埋め込むと、Bot確認ページに飛ばれてしまうのでYahoo Financeをリンク先とさせて頂きました。)
(Bloomberg) -- ProLogium Technology Co., the Taiwanese solid-state battery maker, is considering going public later this year, people with knowledge of the matter said.
The company is holding talks with potential advisers about options including listing in the U.S. through a merger with a special purpose acquisition company, according to the people, who asked not to be identified because the information is private. While discussions are at an early stage, any deal could give ProLogium a multibillion-dollar valuation, the people said.
― Taiwanese Battery Maker ProLogium Is Said to Weigh SPAC Deal - Yahoo Finance より
- ProLogium Technologyが2021年後半に株式を公開することを考えている
- SPAC上場による公開を示唆
- 株式公開の話し合いとしてはまだ初段階だが、実現すれば数十億ドル(約数千億円)の価値がある
後日、3月31日付で台湾メディアにも取り上げられていました。こちらも載せておきます。
読み進める前に
これ以降は、台湾の固体電池ベンチャー、ProLogium Technologyについて紹介していきます。
今回、本記事では固体電解質を用いたバッテリーを固体電池、もしくは全固体電池ではなく、SSB (Solid State Battery)と表記させて頂きます。
- メディアによって表記が統一されていない(少なくとも私が調べる限りではそのように見受けられる)
- 液体電解質を一部混ぜたり、あるいは溶液をゲル化した半固体材料を電解質として用いる場合も固体電池と呼ぶらしい
テクノロジー系用語の定義って難しく(本来の意図しない使用例のまま広まる。昔は正しい事象であったが、科学技術の進歩によって元々の意味と矛盾が生じていてもそのまま使用される、等)、メディアによってProLogium Technology(以降、PLG)を"全"固体電池ベンチャーと紹介していたりそうでなかったりするのでSSBで統一させて頂きます。
(全固体電池はAll-Solid State Batteryと言うのかもしれないですが、、、、)
ProLogium Technology(輝能科技)について
- EMS世界最大手の鴻海精密工業の出身者らが2006年に設立
- 世界で初めて固体セラミック電解質を用いたリチウム電池を製造
- 欧州や中国など世界の大手自動車メーカーとも既に技術テスト実施
- 2012年には曲げることができるフレキシブルリチウムセラミックバッテリー(FLCB)を開発
- ソフトバンクグループ(以降、SBG)による出資を受けている
FLCBなんて結構面白いなあと思っていて、以下のように
- 時計のバンド部分にバッテリーを埋め込む
- 衣服に埋め込む(ハリウッド映画に出てくるようなパワースーツなるものが実現可能)
- → 無線充電と組み合わせると、スマホをポケットに入れているだけで充電とかいけそう(個人の妄想)
なんてことが可能ですからね。
グローバルSSBのマイルストーン
PLG作成の2020年資料にグローバルSSB市場における各企業のマイルストーンをまとめていました。
以下、たいかぶの過去ツイート。
ProLogium Technology作成の2020年資料にグローバルSSB (Solid State Battery)のマイルストーン記載。
— たいかぶ@🇹🇼台湾株投資 (@taikabu0) January 11, 2021
・ProLogiumは競合他社に対して4~10年進んでいるとアピール
・米国の競合(QuantumScape?)は2025年に量産計画
・日本勢(トヨタ?パナ?)は2020年後半を目途に量産
・ProLogiumは今年から量産開始 pic.twitter.com/RzQX69oati
- PLGは競合他社に対して4~10年進んでいるとアピール
- 米国の競合(QuantumScape?)は2025年に量産計画
- 日本勢(トヨタ?パナ?)は2020年後半を目途に量産
- → これに対してPLGは今年から量産開始
2019年8月:中国EVメーカーNIO(蔚来汽車)と戦略提携締結
The landing of solidstate battery car is on the clock with a strong entry of NIO together with ProLogium
----2019/08/22
After the threeminute battery exchange and the fastest pure electric supercar, NIO is now going to revolutionize the power battery technology. On August 22, NIO and ProLogium organized a strategic cooperation agreement signing ceremony in Taoyuan, Taiwan. Electric Power Engineering VP of NIO, Dr. ChenDong Huang, and CEO of ProLogium, Vincent Yang were the representatives of the two parties for signing this agreement. Both parties reached a series of consensus for setting the shortterm goal as creating a prototype using ProLogium solid state battery pack. They would have more indepth discussions with respect to the cooperation in the production of solidstate battery pack.
中国EVメーカーNIOがPLGと共同でSSB搭載のプロトタイプ開発を発表しました。両社の戦略的提携における第一段階のゴールということですね。
試作車完成後、出来栄え次第で量産までいく期待ありです。只、この発表ニュース後どうなっているかは正直謎ではあります(プレスリリースないので)。
2020年5月:Series Dにて$100M調達
ProLogium Raises a Series D Run to Expand Solid-State Battery Production Capacity
----2020/05/07
ProLogium Technology, a solid-state battery(SSB) manufacturer, announced that it has finished its Series D financing led by BOCGI and FAW Group. Beforehand, the firm had received continuous investment from SBCVC and dGav Capital. The new round of financing will be used for construction of their second mass production plant, the 1-2GWh line will accelerate commercialization of solid-state battery.
- シリーズDで$100M調達
- 第2量産ライン立ち上げに充てる
- 第2量産ラインの生産キャパは1-2GWh
会社説明資料(以下)にも2つの生産ラインが記載されています。第2ラインは今年2021年に量産開始予定とのことです。
シリーズDまで行っているということはIPO上場も考えられますよね。それで今回のSPAC上場ニュースなのかもしれません。
ちなみに、引用文中の"SBCVC"はソフトバンク・チャイナ・ベンチャー・キャピタルです。PLGの最大株主らしいです。
ここにもSBGの手が(・∀・)
2021年2月:ベトナムの合弁会社でSSB生産発表
Vinfast and ProLogium Launching JV to Build SolidState EV Battery Pack in Vietnam
----2021/02/25
(中略)
According to the MOU, the two parties will set up a joint venture to produce automotive solid-state battery(SSB) pack for Vinfast’s EVs. The JV will have priority to purchase PLG’s SSB product and will be licensed to use PLG’s patented SSB pack assembly technology, MAB (Multi-Axis Bipolar+), to produce CIM/CIP SSB pack (cell is module/ cell is pack) locally in Vietnam. PLG will produce SSB inlays (semi-finished battery cell composed of cathode, solid state electrolyte and anode layer) for the JV at one of its Asian manufacturing centers (expected to reach 1-2 GWh capacity in 2022), which will support mass production schedule of Vinfast EVs in 2023-2024.
以下、日本語の記事です。
3月3日、固体セラミック電解質を用いたリチウム電池(リチウムセラミックバッテリー;LCB)を開発・製造する台湾の「輝能科技(プロロジウムテクノロジー;PLG)」は、ベトナムの新興自動車メーカー「VinFast」と事業提携に関する覚書(Memorandum of Understanding;MOU)を締結し、ベトナムに合弁会社を設立すると発表した。覚書に基づき、合弁会社はPLGから優先的に全固体電池製品を調達できるほか、PLGが保有する電池パック「MAB(Multi-Axis Bipolar+)」の技術ライセンスを受け、ベトナムでPLGの技術を活用して全固体電池パックを生産する。
この合弁会社が傘下に擁する生産拠点の生産能力は2022年までに1~2GWh規模に達する予定で、VinFastが2023~24年に計画している全固体電池を搭載した電気自動車(EV)の量産を充分にサポートすることが可能だ。
ベトナムに合弁会社を設立し、ベトナムの自動車メーカーにEV向けバッテリーを生産・提供するとのことです。PLGが保有する製品の中でも、MAB(Multi-Axis Bipolar+)技術を採用した電池パックを使用するみたいです。
こういうところで量産実績を積んで、メジャー自動車メーカーのサプライチェーン入りへとステップアップしてほしいですね。
技術的な難しさを指摘する声
良いニュースばかりの紹介はよくないので、PLGはそんなにイケイケなの?本当?という声も聞いておきましょう。
(中略)
台湾発ベトナム経由で全固体電池がEVに搭載されるかもしれないという発表です。全固体電池はトヨタが2020年代前半に発売する自動車に全固体電池を搭載すると発表しており、フォルクスワーゲンが出資するQuantumScapeも2024年の実用化を狙っています。今回発表された、ProLogiumの全固体電池のEV向け量産も2023~24年となっており、ほぼ先行企業と同様の時間軸であるようです。一方で、現時点ではVinfastのどのような車種で、どのようなスペックを想定して全固体電池を搭載するのか、まだ具体的な情報は何も発表されていないため、本当に実用化できるのか、という点も含めて実際JVで量産開発を進めた時にどうなるかは未知な部分が多いです。ProLogiumは以前に中国の新興EVメーカーのNIOと提携を発表しましたが、NIO DAYで発表されたET7では別のサプライヤの半固体電池が搭載されると言われており、結局、まだ車載での実用化は難しかったのかと感じ取れる発表でした。本当に実用化できるのか現時点ではわかりませんが、引き続き注視していきたいと思います。
― 台湾の全固体電池企業ProLogiumがベトナム国産自動車OEM VinfastとJVを設立 - Techview β より
前述しましたが、2019年にNIOとの連携発表後、進捗を報告するニュースがないところを見ると(私が探しきれていない可能性もある)、実用化への壁はかなり高いのかもしれません。競合他社においても同様のことが言えると思います。
こちらのニュースもどうぞ。
(中略)
中国の新興EVメーカーであるEnovateは、2019年にEnovate ME7という新型EV SUVでProLogium Technologyのリチウムセラミック電池を採用することを発表した。
これはEVとして初の全固体電池採用となると話題になったが、2020年9月に実際に発売されたEnovate ME7は、実際にはハイニッケルのNCM622を正極材に使った電池であり、Wanxiang Groupが提供しているものであるようだ。
― リチウムセラミックバッテリーを開発する台湾ベンチャーProLogium Technology - Techview β より
まとめ
- 台湾のSSBベンチャー、PLGが今年後半にアメリカへSPAC上場する計画
- 中国EVメーカーのNIOと共同でSSB搭載のプロトタイプ開発
- ベトナムの新興自動車メーカー向けにSSB生産
- 本分野において量産化に一番近い?
以上、PLG関連ニュースを紹介しましたが、PLGが競合の中で最も量産に近いと考えてもよいのかなと。
ホンハイがEVプラットフォームのオープン化を進めているので、こちらと絡むと更に面白いかと思います。
台湾企業同士ですし。元社員ということでわだかまりがないといいですが、、、、、
では、この辺で。
拜拜~