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【2020年&過去3年間の業績比較】シリコンウエハ業界トップ3《信越化学、SUMCO、環球晶圓(GlobalWafers)》

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今回はシリコンウエハ業界の世界市場シェアトップ3
・信越化学工業
・SUMCO
・環球晶圓(GlobalWafers)
の2020年の業績、そして2020年を含む過去3年間の業績比較をしていきます。

信越化学とSUMCOの業績についてまとめている記事はありますが、

  1. 国内企業のみで比較しても世界市場の全体における立ち位置、もしくは企業の成長度が明確にならない
  2. 日本の独断場である本業界の勢力図を変える海外勢の存在

の理由から海外の競合を含めて業績の比較をすることで、信越化学とSUMCOの業績の良し悪しが改めてわかるのではないかと思いました(もしくは海外の競合(ここではGlobalWafers)が業績・成長性で優れているかもしれない事に気づきを得ることができます)。

 

これまでは日本企業2社で世界市場を圧倒していたので、「国内企業をウォッチ=世界市場全体のトレンド」となっていましたが、昨年本業界の勢力図を大きく変えるであろう出来事があり(後述)、今後国内企業2社+海外の競合の比較をしないと世界市場全体のトレンドをキャッチアップできないのではないかと思いました。

 

後述しますが、環球晶圓(GlobalWafers)はSUMCOを追い抜き世界第2位へ躍り出る予定です。

 

投資をする上で競合他社の業績・動向をチェックするのは大事ですね。

今回は日本株投資をやっている方にとっても有益な内容になっているかと思います。もちろん、台湾株投資をやっているたいかぶくんにとってもね。

 

更新履歴

  • 2021年7月24日:タグ更新

 

 

シリコンウエハ業界トップ3

まずは、シリコンウエハ業界のトップ3である信越化学、SUMCO、環球晶圓(GlobalWafers)の時価総額、売上高を簡単に見ておきましょう。

  信越化学 SUMCO GlobalWafers
銘柄コード 4063
(東京証券取引所)
3436
(東京証券取引所)
6488
(台北証券取引所)
株価 18,640円 2,645円 719TWD
時価総額 約7兆7,700億円 約7,700億円 約3,100億TWD
(約1兆2,000億円)

株価、時価総額共に2021年3月19日時点

 

皆さんに各社の規模感を直感的にイメージしていただくために、括弧内に日本円換算値を記載しました。1TWD=3.83JPYで計算しています。以降、全てこのレートに従います。

 

2021年は市場シェアが大きく変わる

シリコンウエハ業界における2020年のビッグニュースと言えばこれですね。

 

以下、2020月11月時点の2020Q3のシリコンウエハ業界の世界市場シェアです。

 

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― GlobalWafers 2020-12-10 Conference Call より

 

  • GlobalWafersがドイツのSiltronicを買収
  • 業界3位と4位の統合
  • 買収完了後にSUMCOを抜いて世界2位に躍り出る(予定)

 

このニュースについては前回記事でも触れています。以下、当時の記事です。

yu-money.hatenablog.com

 

業績比較①:2020年

まずは2020年の業績を比較していきます。

信越化学の決算資料はこちら、SUMCOはこちら、環球晶圓(GlobalWafers)はこちらからダウンロード可能です。

 

以降読み進めるに当たっての注意点として

  • 特別に明記しない限り、信越化学 = 半導体シリコン事業の業績
  • 会計期間の違い(信越化学は3月期決算、SUMCOとGlobalWafersは12月期決算)により、Q1は1 ~ 3月、Q2は4 ~ 6月、Q3は7 ~ 9月、Q4は10 ~ 12月

とします。

 

つまり2つ目の注意点は、
・2020Q1は信越化学の2020年3月期第4四半期
・2020Q2は信越化学の2021年3月期第1四半期
・2020Q3は信越化学の2021年3月期第2四半期
・2020Q4は信越化学の2021年3月期第3四半期
を示します。
SUMCOとGlobalWafersについては特に気にする必要はありません。

 

2020年売上高

  2020Q1 2020Q2 2020Q3 2020Q4 2020
信越化学 918億円 949億円 941億円 920億円 3,728億円
SUMCO 722億円 749億円 716億円 726億円 2,913億円
GlobalWafers 135億TWD
(約517億円)
137億TWD
(約525億円)
140億TWD
(約536億円)
141億TWD
(約540億円)
554億TWD
(約2,122億円)

 

諄いですが、本記事における信越化学(半導体シリコン事業)の2020年売上高(一番右列)は2021年3月期第1四半期 ~ 第4四半期(2020年4月 ~ 2021年3月)ではないことに注意。つまり、「2020年売上高 = 2020年3月期第4四半期 + 2021年3月期第1四半期 ~ 第3四半期」。

2020年営業利益

  2020Q1 2020Q2 2020Q3 2020Q4 2020
信越化学 311億円 385億円 370億円 371億円 1,437億円
SUMCO 116億円 115億円 66億円 81億円 378億円
GlobalWafers 38億TWD
(約146億円)
42億TWD
(約161億円)
41億TWD
(約157億円)
32億TWD
(約123億円)
153億TWD
(約586億円)

 

ではここからですが、規模の異なる3社の絶対値をそのまま並べて比較しても面白くないので

  • 成長率
  • 利益率

の観点で比較していきます。

四半期毎の売上高QoQ

以下、四半期毎の売上高QoQです。同年前期の売上高と比べて(2020Q1のQoQは2019Q4との比較)どのくらい成長したかがわかります。

 

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【グラフの見方】
例えば、SUMCOの第4四半期の売上高は同年前期(第3四半期)の売上高と比べて+1.38%だったということになります。

 

  • 信越化学:QoQでマイナス成長の傾向。
  • SUMCO:2020年上半期は他の2社より大きな増収率。2020第3四半期で大きく減収。
  • GlobalWafers2020年一年を通して増収。安定した売上高成長。

四半期毎の売上高YoY

次に四半期毎の売上高YoYです。2019年の各四半期売上高と比べた時の2020年の各四半期の増減率がわかります。

 

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【グラフの見方】
例えば、SUMCOの第4四半期の売上高は全同期比(2019年第4四半期)の売上高と比べて+2.3%だったということになります。

 

  • 全体の傾向:YoYマイナス = 2019年に比べて減収
  • 信越化学:四半期全て前年同期比マイナス。只、減収率は他の2社に対して概ね小さいと言える(第4四半期において他の2社はYoYプラス)。
  • SUMCO:第1四半期のYoYは大幅減収。その後回復基調。
  • GlobalWafers:SUMCO同様、第1四半期で大幅減収し、その後回復基調。

四半期毎の営業利益QoQ

以下、四半期毎の営業利益QoQです。売上高QoQ同様、同年前期の売上高と比べて(2020Q1のQoQは2019Q4との比較)どのくらい成長したかがわかります。

 

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  • 信越化学:前述した売上高QoQと同じトレンド。振り幅は売上高QoQより大きい。
  • SUMCO:他の2社と比べて、増減幅の大きい1年間。
  • GlobalWafers:第4四半期で大きく減益。

四半期毎の営業利益YoY

以下、四半期毎の営業利益YoYです。売上高YoY同様、2019年の各四半期営業利益と比べた時の2020年の各四半期の増減率がわかります。

 

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  • 信越化学:3社の中、唯一前年同期比プラス有り。マイナス着地の四半期においても他の2社に対しても小さい。
  • SUMCO前年同期比全てマイナス。
  • GlobalWafers前年同期比全てマイナス。SUMCOよりは良いと考えられる。

営業利益率

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  • 営業利益率の高さ:信越化学 > GlobalWafers > SUMCO
  • 信越化学:他の2社を大きく突き放す営業利益率
  • SUMCO営業利益率が徐々に低下しているのが不安(3年の中期スパンで見るとさらに明らか。後述。)
  • GlobalWafers2020年第4四半期で営業利益率を大きく落とす

 

業績比較②:直近3年間(2018 ~ 2020年)

さらに時間軸を伸ばして、過去3年間の四半期毎業績を比較し、中期的な各社の業績の良し悪しを見ていきます。

四半期毎の売上高QoQ

過去3年間の四半期毎の売上高QoQを比べます。前期の売上高と比べてどのくらい成長したかがわかります。

 

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  • 信越化学2019Q2における他の2社の大幅減収に対して耐えている(増収)。他社に比べてグラフの上方向に位置する回数が多い。
  • SUMCO他の2社と比べて減収着地が多い。
  • GlobalWafers:SUMCOと似た増減収トレンド。ただ、SUMCOより増減幅は小さい。

四半期毎の営業利益QoQ

過去3年間の四半期毎の営業利益QoQを比べます。前期の売上高と比べてどのくらい成長したかがわかります。

 

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  • 信越化学増益着地数が比較的多い。
  • SUMCO減益着地数が他社と比べて多い。
  • GlobalWafers:概ね±10%のレンジで推移 → 大幅な増減益が少ない → 過去3年間に渡って安定している

営業利益率

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  • 信越化学:2018年第4四半期こそ大きく下げているが、中期トレンドで見ると上昇傾向。
  • SUMCO2018年後半から営業利益率が下降を辿る。最近は利益率10%前後を推移。
  • GlobalWafers安定した営業利益率。30±3%を推移。

 

2020年の営業利益率にてSUMCOの営業利益率の低下を指摘しましたが、時間軸を伸ばして見ると、中期トレンドとして下降していることがわかりますね。

SUMCOがちょっと心配です。

信越化学強し!と言ったところやな。

 

業績比較③:売上高成長率 vs 世界ウエハ出荷面積成長率

各社の成長率がシリコンウエハ業界全体に対してアウトパフォームしているのかアンダーパフォームしているのか比較してみます。

以下、各社の売上高成長率と世界ウエハ出荷面積成長率推移を示したグラフです。シリコンウエハ出荷面積はSEMIを参考先とし、こちらでグラフ作成を行いました。

 

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【グラフの見方】
2018年第1四半期の各社売上高及び世界ウエハ出荷面積を1として、各四半期の売上高及び世界ウエハ出荷面積が基準点(2018年第1四半期)に対して何倍になっているかを表します。

 

  • 信越化学:世界ウエハ出荷面積の減少期間(2019Q1 ~ 2020Q1)においてもプラス成長維持(2018Q1に対して)。世界ウエハ出荷面積の増減トレンドをアウトパフォームしている
  • SUMCO()とGlobalWafers()の売上高成長率はウエハ出荷面積と概ね相関があるが
  • SUMCO:GlobalWafersより世界ウエハ出荷面積の増減トレンドへの相関が強い → 世界ウエハ出荷面積のトレンドをウォッチしていれば業績の予測が可能
  • GlobalWafers:信越化学同様、世界ウエハ出荷面積の増減トレンドをアウトパフォームしていると言える。只、信越化学よりは小さい幅。かつ、SUMCO同様に世界ウエハ出荷面積のトレンドをウォッチしていれば業績の予測が可能である。

 

その他比較①:地域別売上構成比率

ここから業績比較とは離れて、各社の地域別売上構成比率を比較してみます。

 

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【グラフの見方】
ローカル(日本 OR 台湾)は各社の自国における売上割合を示します。SUMCOであればローカル=日本、GlobalWafersであればローカル=台湾の売上割合です。見方を変えれば、赤+ピンク=アジア全体になります。
更にSUMCOは左側が2019年、右側が2020年の地域別売上構成比率です。
GlobalWafersは左側がGlobalWafers2019年単体、右側がSiltronicの地域別売上構成比率を足し合わせた場合の2020年6月時点での地域別売上構成比率になります。

 

信越化学はグループ全体の構成比率です。実際問題、半導体シリコン事業の構成比率と乖離していると思いますが眉唾程度にみていただけると幸いです。半導体シリコン事業の地域別売上構成のソースを知っている方がいれば教えて下さい。表を更新します。

 

  • SUMCO:アジア地域の依存度が非常に高い。
  • GlobalWafers:アジア全体で6割強を占有しつつも、米国及び欧州、そしてその他地域で3割あり、SUMCOに比べると分散されている。

 

その他比較③:株価チャート

以下、2018年始めを起点とした3年間の株価チャートです。

 

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:信越化学

:SUMCO

:GlobalWafers

 

厳密には2018年始めを起点に出来ていないので上昇率について若干差があると思います。ご了承下さいm(_ _)m

 

  • コロナ後の推移として
  • 信越化学:軟調に上昇
  • SUMCO、GlobalWafers:5 ~ 10月にかけてヨコヨコの展開
  • GlobalWafers:秋頃のSiltronic買収ニュースで急騰。 信越化学に追いつくパフォーマンス

 

直近3年間(2018 ~ 2020年)の業績推移(四半期毎)

では最後に各社の直近3年間の四半期毎業績推移を一気に見ていきます。

信越化学

売上高・営業利益

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粗利益率・営業利益率

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EPS

半導体シリコン事業のみのEPSは公表されていませんので割愛させて頂きます。グループ全体のEPSは各自調べていただければと思います。

 

  • 営業利益率:緩やかな上昇トレンド

SUMCO

売上高・営業利益

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粗利益率・営業利益率

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EPS

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  • 売上高、営業利益、利益率、EPS全て減少トレンド
  • 2020年現在の利益率は2018年のピークの約半分に
  • EPSは2分の1ないし3分の1に

環球晶圓(GlobalWafers)

売上高・営業利益

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粗利益率・営業利益率

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EPS

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  • 2018年〜2019年にかけてピークを形成し、2020年の上半期にコロナの影響で減収減益。
  • 2020年上半期から回復基調。世界ウエハ出荷面積の回復に起因すると考えることもできる。
  • 信越化学ほどとまではいかないが、安定した営業利益率。

 

まとめ

  • 利益率で考えると、信越化学 > GlobalWafers > SUMCO
  • 過去3年間の業績振り返りから、GlobalWafersは安定型と言える。
  • 成長型は信越化学。更に利益率は他の2社より高く、かつ緩やかな上昇を描いている。
  • SUMCOの業績が若干心配…利益を稼ぐ力が低下している(利益率及びEPSより)
  • 2021年2月末時点でGlobalWafersはSiltronic株の7割取得済みです。欧州の、特に自動車向けに強いSiltronicとの相乗効果で地域・製品ポートフォリオを広げ、業界1位の信越化学を追いかけるモードに入ったと思います。

 

2021年、目が離せない業界の1つ

 

では、この辺で。

拜拜~