今回は台湾を代表する大手ファブレスICデザインハウス3社
聯發科技(︎MediaTek)
︎聯詠科技(Novatek Microelectronics)
瑞昱半導體(Realtek Semiconductor)
の2020Q4決算をまとめて紹介します。
この3社は世界ファブレス半導体ランキングのトップ10入りしているなど、規模の大きく有名な会社であるので3社の事業内容を紹介すると共に、2020Q4決算結果を一気に見ていこうと思います。
更新履歴
- 2022年4月23日:サムネイル更新
- 2021年7月24日:タグ更新
- 台湾を代表するファブレスICデザインハウス
- 特徴①:世界ファブレス半導体ランキングへのトップ10入り
- 特徴②:2020年の台湾ハイテク指数をアウトパフォーム
- 2020年第4四半期決算
- 2021年第1四半期見通し
- 直近3年間(2018 ~ 2020年)の業績推移(四半期毎)
- まとめ
台湾を代表するファブレスICデザインハウス
以下、台湾を代表するファブレスICデザインハウス、「MediaTek」、「Novatek」、「Realtek」の株価、時価総額と2020年の売上高です。
MediaTek | Novatek | Realtek | |
---|---|---|---|
銘柄コード | 2454 | 3034 | 2379 |
株価 | 950TWD | 479TWD | 495TWD |
時価総額 | 1兆5,000億TWD (約5兆6,000億円) |
3,000億TWD (約1兆1,000億円) |
2,500億TWD (約1兆円) |
売上高 (2020年) |
3,220億TWD (約1兆2,040億円) |
800億TWD (約3,000億円) |
780億TWD (約2,920億円) |
株価、時価総額共に2021年2月5日時点
皆さんに各社の規模感を直感的にイメージしていただくために、括弧内に日本円換算値を記載しました。1TWD=3.74JPYで計算しています。以降、全てこのレートに従います。
比較のために日本の大手ファブレスICデザインハウスの売上高(2020年3月期)を載せておきます。
- ソシオネクスト:約1,100億円(予測)
- メガチップス:約660億円
― 特別インタビュー(電子デバイス産業新聞)、投資家情報(MegaChips社HP) より
次に各社の事業について軽く紹介します。
モバイル向けSoC:聯發科技(MediaTek)
無線通信、高解像度テレビ、光ディスク 、 DVD、Blue-ray製品向けのSoCを手がけるファブレス半導体企業。
製品構成
― 2019年次報告書 より
マルチメディア向けチップセットというのは定義の広い言葉なのですが、MediaTekの手がけるチップセットは
- スマホ・タブレット向けチップセット
- Bluethooth / ワイヤレスLANチップ
- GPS、NFC等も
- スマートホーム向けSoC
- DVD / Blue-ray プレイヤー向けSoC
- 車載向けSoC
等々です。
その他カテゴリは、テクニカルサービス及びライセンス料になります。
液晶パネルドライバ:聯詠科技(Novatek Microelectronics)
通信機器、コンピューター周辺機器、LCD(液晶ディスプレイ)ドライバで使用されるICの設計を手がける企業。
製品構成
― 2019年次報告書 より
Novatekの手がけるSoCは
- 液晶ディスプレイ(TV、ノートPC、スマホ等)向けタイミングコントローラ
- イメージセンサ&信号処理
です。
簡単にまとめると、ディスプレイ周りを広範囲にカバーしている感じですね。
国別売上構成
- 台湾:41%
- アジア:58%
- その他:1%
― 2019年次報告書 より
ディスプレイ関連となればアジアの企業相手にビジネスをしていくのは必然的ですね。Samsung、LGや、日本・台湾・中国のメーカー等々。
去年「台湾50指数」の構成銘柄入りしたことからも株価の勢いを感じます。
以下、当時の記事です。
ネットワークドライバ:瑞昱半導體(Realtek Semiconductor)
通信ネットワーク、 コンピュータ周辺及びマルチメディアに関する半導体の設計開発・販売を行なっている会社です。
パソコンのオーディオドライバでカニのマークを見たことある方はいると思います。
そう、カニマークで有名なRealtekです。
― 【台湾50指数】構成銘柄入れ替え《金融2企業除外→半導体2企業追加》 - たいかぶ〜台湾株式投資による資産運用記 より
製品構成
― 2019年次報告書 より
ここの会社も色々手広くやっているICデザインハウスなので正直"IC"という一括りにされてもわかりづらいですね。
代表的な製品は
- イーサーネットコントローラ・スイッチコントローラ
- 無線LANコントローラ(PCIe/ USB2.0 / SDIO2.0 / SDCI 3.0インターフェース)
- Bluetooth5 BLE / Audio SoC
- USB type-Cコントローラ
- オーディオコーデック
- LCDコントローラ(VGA / DVI / HDMI / DPインターフェース)
- 上記インターフェースから別インターフェースへの変換器
等々です。
国別売上構成
- 台湾:50%
- アジア:50%
- その他:1%以下
― 2019年次報告書 より
RealTekもNovatek同様に去年「台湾50指数」の構成銘柄入りしました。
以下、当時の記事です。
特徴①:世界ファブレス半導体ランキングへのトップ10入り
これら3社共に世界ファブレス半導体ランキングのトップ10入りしている世界を代表する台湾のICデザインハウスです。特にMediaTekは以前から常連です。NovatekとRealtekはトップ10入りしたり、惜しくも外れたり、そんな感じでしたがここ最近は安定してトップ10入りしている印象です。まあ実際の所、出展先によって中国企業を入れていたりしてまちまちなのもあります。
以下、最新(2020年第3四半期)のファブレスICデザインハウスの売上ランキングです。
― TrendForce より
- Top 3:MediaTek
- Top 7:Realtek
- Top 8:Novatek
Nvidia($NVDA)とAMD($AMD)の成長率は言うまでもなく素晴らしいですが、台湾勢3社も前年同期比+40%を越える成長率です。
特徴②:2020年の台湾ハイテク指数をアウトパフォーム
この3社、共に台湾ハイテク指数の2020年の1年リターン(+59.16%)をアウトパフォームしました。後ほど業績推移グラフを載せますが、業績を見ても勢いがあるのがわかるかと思います。
銘柄名 | 1年リターン | 3年リターン |
---|---|---|
聯發科技 MediaTek |
+68.4% | +154% |
瑞昱半導體 Realtek |
+66.2% | +258% |
聯詠科技 |
+65.8% | +225% |
以下、引用記事です。
では次に各社の2020年第4四半期の決算を一気に見ていきたいと思います。一つの記事で3社扱い長くなるので、連結財務諸表の主要箇所のみ簡潔にまとめています。
2020年第4四半期決算
聯發科技(MediaTek)
決算資料はこちらからダウンロード可能です。
連結財務諸表(四半期)
2020Q4 | QoQ | YoY | ||
---|---|---|---|---|
売上高 | 964億TWD (約3,600億円) |
100% | -0.9% | +49.0% |
粗利益 | 429億TWD (約1,600億円) |
44.5% | -0.4% | +55.9% |
営業利益 | 154億TWD (約600億円) |
15.9% | +5.1% | +146.9% |
EPS | 9.35TWD | +11.0% | +132% |
- 前期比ではほぼ横横
- 同年前期と比べると、
- 売上高・粗利益共に約+50%成長
- 営業利益:約2.5倍
- EPS:約1.3倍
連結財務諸表(年度)
2020 | YoY | ||
---|---|---|---|
売上高 | 3,221億TWD (約1兆2,000億円) |
100% | +30.8% |
粗利益 | 1,415億TWD (約5,300億円) |
43.9% | +37.4% |
営業利益 | 432億TWD (約1,600億円) |
13.4% | +91.5% |
EPS | 26.01TWD | +77.1% |
- 売上高成長率+31%
- 営業利益率:前年比+92%
- EPS:前年比約1.8倍
聯詠科技(Novatek Microelectronics)
決算資料はこちらからダウンロード可能です。
連結財務諸表(四半期)
2020Q4 | QoQ | YoY | ||
---|---|---|---|---|
売上高 | 225億TWD (約840億円) |
100% | +2.05% | +35.87% |
粗利益 | 85億TWD (約320億円) |
38.03% | +12.65% | +60.23% |
営業利益 | 47億TWD (約180億円) |
21.15% | +11.4% | +94.42% |
EPS | 5.99TWD | +6.96% | +202% |
- 売上高:前期比では微増
- 同年前期と比べると、
- 売上高:+36%
- 粗利益:+60%
- 営業利益:約2倍
- EPS:約3倍
連結財務諸表(年度)
2020 | YoY | ||
---|---|---|---|
売上高 | 800億TWD (約3,000億円) |
100% | +24.21% |
粗利益 | 280億TWD (約1,050億円) |
34.97% | +35.62% |
営業利益 | 148億TWD (約560億円) |
18.49% | +49.91% |
EPS | 19.42TWD | +49.04% |
- 売上高成長率+24%
- 営業利益率:前年比+50%
- EPS:前年比約1.5倍
瑞昱半導體(Realtek Semiconductor)
決算資料はこちらからダウンロード可能です。
連結財務諸表(四半期)
2020Q4 | QoQ | YoY | ||
---|---|---|---|---|
売上高 | 221億TWD (約830億円) |
100% | +1.4% | +32.4% |
粗利益 | 95億TWD (約360億円) |
43.0% | +2.5% | +29.6% |
営業利益 | 27億TWD (約100億円) |
12.0% | +3.2% | +48.1% |
EPS | 5.25TWD | +% | +% |
- 売上高、利益共に前期比では微増
- 同年前期と比べると、
- 売上高・粗利益共に約+30%成長
- 営業利益:約1.5倍
- EPS:約1.3倍
連結財務諸表(年度)
2020 | YoY | ||
---|---|---|---|
売上高 | 778億TWD (約2,900億円) |
100% | +28.0% |
粗利益 | 333億TWD (約1,250億円) |
42.8% | +25.1% |
営業利益 | 86億TWD (約320億円) |
11.1% | +36.5% |
EPS | 17.24TWD | +29.0% |
- 売上高成長率+28%
- EPS:前年比+29%
2021年第1四半期見通し
聯發科技(MediaTek)
- 売上高:964 ~ 1,041億TWD → QoQ+0 ~ 8%
- 粗利益率:43.5% ± 1.5% → 2020Q4同等
聯詠科技(Novatek Microelectronics)
- 売上高:252 ~ 261億TWD → QoQ+12 ~ 16%
- 粗利益率:38 ~ 41% → QoQ+0 ~ 3Pts
- 営業利益率:22 ~ 25 % → QoQ+1 ~ 4Pts
瑞昱半導體(Realtek Semiconductor)
- なし
直近3年間(2018 ~ 2020年)の業績推移(四半期毎)
では上記2020年第4四半期の業績を追加した各社の直近3年間の四半期毎の業績を一気に見ていきます。
聯發科技(MediaTek)
売上高・営業利益
粗利益率・営業利益率
EPS
聯詠科技(Novatek Microelectronics)
売上高・営業利益
粗利益率・営業利益率
EPS
瑞昱半導體(Realtek Semiconductor)
売上高・営業利益
粗利益率・営業利益率
EPS
利益率とEPS推移のグラフついては縦軸レンジを揃えましたので比較しやすいかと思います。売上高・営業利益推移グラフについてはMediaTekと残り2社のスケールが違いすぎて縦軸レンジを揃えると見にくくなるので止めました。
各社右肩上がりで美しいな。
利益率の高さもポイントですね。
まとめ
- 台湾を代表するファブレスICデザインハウス、MediaTek、Novatek、Realtekの紹介
- 3社共に世界ファブレス半導体ランキングのトップ10入りしている世界を代表する台湾のICデザインハウス
- 3社全て、台湾ハイテク指数の2020年の1年リターン(+59.16%)をアウトパフォーム
- 3社全て、2020年の売上高成長率20%強
では、この辺で。
拜拜~